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げんじゅつてんまたろう

幻術天魔太郎

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《幻術天魔太郎(げんじゅつてんまたろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 45,616 字 · 90 頁

青空文庫

答えたのは今井某でした。雨戸のそとでは天魔太郎と月子が、心外道人直伝の幻術をつかって、四人の武士をねむらせようとしていたことは、もとよりわかるはずもありません。

「なんの、酒のせいだよ、こんなぐあいにフラフラするのは」

太田原伝三郎は肩ひじをはって強がりますが、ともすれば、コクリコクリといねむりの出るのをふせぎようもありません。

その時でした、らん間になにやら物の影がさしたと思うと、一塊の怪物、四人が車座になって酒をのんでいる頭の上へ、サッと飛びおりざま、たったひとつのあんどんを、パッとたたき消しました。

「や、おのれ、怪物」

「おのおの、用心ッ」

と叱咤しましたが、まっくらやみに四人の武士がもつれては、うっかり刀をぬくこともなりません。

その間にりこうな大猿の次郎坊は、山野にそだって、夜でも目のみえるのをさいわい、太田原伝三郎はじめ、四人の武士をめちゃめちゃにひっかいたうえ、まげ節に縄をとおして柱に縛り、さらに太田原伝三郎の腰から、大牢のカギをうばいとって、もとのなげしに飛びつくと、縁がわへらん間をくぐって大雨の庭へと、物のみごとに跳躍します。

「や、おのれ、けしからぬ髪をはなせ」