輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
いくどめかのさいご
幾度目かの最期
久坂 葉子
線上閱讀久坂 葉子《幾度目かの最期(いくどめかのさいご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,103 字 · 121 頁
患者の間に私は入りこんで腰をかける。隣りのおじいさんは皮膚一面に小さなぶつぶつがある。それは化膿していて、みにくくはれている。そして時々それをひっかいたりしている。前側の若い女、私と同じ位の年であろうか。右足のかかとより真白の繃帯でつまさきまで掩われていて杖が傍においてある。手垢でよごれた雑誌を一枚一枚ひとさしゆびに唾をつけてめくり一生懸命よみふけっているその眼は美しいけれど、どことなくくもっていて不潔な感じを抱かせる。その女の真上の柱時計が低い大きな音で秒を刻み、さっきより十分を経過したことを知る。私の頭に鞄の中のことが浮んで来る。今日中に、コピーをとって印をもらい、明日他の会社に納めなければならない。私は立ち上る。部屋より出て来た医員の一人に思い切ってたずねる。
「戸田先生……いらっしゃいませんか」
「戸田先生は――と、(くるりと後をむく)出張だね! 東京だろう。学会のあれだろう」
怒鳴りまくるその後姿をみて私はほっとした。何故だ。反問する間もなく次の瞬間、
「いや今朝、おかえりでしたよ。控室にいらっしゃるでしょう。おひる御飯」
看護婦の声。私は胸がふるえる。