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いくどめかのさいご
幾度目かの最期
久坂 葉子
線上閱讀久坂 葉子《幾度目かの最期(いくどめかのさいご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 59,103 字 · 121 頁
ところがある日、こんなことを結婚した姉からきいた。
「明雄さんね、A市に開業してるんやって。洋裁の友達のYさんね、あの人に会った時、ふっとしたことから明雄さんの話が出たんよ。あのひとのすぐ近所なんやって。そいでよく遊びに行くんやって。チフスの注射もしてもらったって」
妊娠してもう五カ月だという姉の心の隅にまだ残っていた明雄さんのこと。……私は突然、今迄のことが思い起された。姉は、私の去年の春の事、即ちH病院へ彼を尋ねたことは全く知らない。私は又会いたいという衝動にかられた。姉は心の隅にきちんと今迄愛した人をつみかさね整理して平然としているのだ。私はたまらない。空虚だった中に彼についての新しい報せが入ったのだ。私は自分の縁談の事も今の立場も捨てて唯、会いたいという情慾のみにかられていた。が、会うという事がどんな結果を生むか一応考えもした。H病院へ行った時、私は世間体も何もかも無視していた。それは私の愛情の強さがそうさせたというより、抑えるものを持たなかったといった方が適切だったろう。今度はあの時より成長もした。打算でものを考えるようになっていた。そして、私は考えの結果、なるべく家庭にしばられるように自分をしむけ、機会を具えなかったのだ。