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しょみんせいかつ

庶民生活

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《庶民生活(しょみんせいかつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,353 字 · 21 頁

青空文庫

それでも、初めのうちは、単なる交際に過ぎないと、無理でも思えないこともなかったが、後には次第にひどくなった。ほかで飲んで二人とも相当に酔って、ぶらりと峠の茶屋にやって来て、また飲み直し夜遅く帰ってゆくこともあった。内山が泥酔して、焼跡の雑草の中に蹲まり、星を眺めながら訳の分らぬ歌を口ずさんでる側に、朋子がじっと附き添ってることもあった。峠の茶屋ではたいてい、内山は百円札を何枚か袂に入れていたが、飲みすぎて金が足りなくなると、朋子が金を取りに自宅へ駆け出して行った。朋子はもう内山のところに入りびたりだとの説もあったが、真偽はとにかく、内山の身辺の世話は、女中任せでなく、朋子が指図していることは確実だった。

そのようなことに対して、世間の厳しい批判の眼が向けられた。内山は男だけに、直接には何も聞かなかったが、朋子が主として矢面に立った。

二人は焼跡の草原などで媾曳をしている、という説があった。――これは最も事情を知らない者の放言だった。

内山は元来、金を使わずに女をまるめこむことが巧みで、朋子を手玉に取っているのだ、という説があった。――私もそういう意見を聞かされたことがあるが、これは明かに悪意ある中傷だった。