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かれがころしたか
彼が殺したか
浜尾 四郎
線上閱讀浜尾 四郎《彼が殺したか(かれがころしたか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 41,336 字 · 83 頁
勿論当時道子は令嬢だったのだ。
もし世に一分間の恋というものがあるとすれば、俺の場合はそうだろう。俺はたった一目彼女を見た時、たった一言彼女と語った瞬間から、道子に魅せられて了ったと云っていい。
如何にも親しげに語ってくれた彼女に又会うべく、俺は下宿を定めてからも、屡々彼女の家を訪れるようになった。此の秋から以来、若き田舎出の青年は全く彼女の為に生きて居たようなものである。
彼女と交際をするにつれて、私は彼女を取り巻く多くの人々の居る事を見出した。私と同じ学校の学生の中にも、可成り彼女の顔を見に来る奴等があった。之等の大勢の男の中に在って道子は少しも困惑のようすはなく、皆に対して如何にも巧みな交際振を発揮して居た。それ故、彼女が誰に最大の好意をもって居るかという事はまったくわからなかった。愚かな俺は、彼女の母の信用を多分に持って居たので、道子からも相当好意をもたれて居ると信じて居たのである。
道子は決してしかし真面目な話をしなかった。恐らく之は誰に対してもそうであったろうが、音楽の話、文学の話、芝居の話など皆とする外は、ブリッジを仕込み、マージャンを我々に教えては楽しんで居るように見えた。