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おもいでのき

思い出の記

小泉 節子

線上閱讀小泉 節子《思い出の記(おもいでのき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,841 字 · 62 頁

青空文庫

して苛めて居るのです。私は子供達に、御詫をして宅につれて帰りまして、その話を致しますと『おゝ可哀相の小猫むごい子供ですね――』と云いながら、そのびっしょり濡れてぶるぶるふるえて居るのを、そのまま自分の懐に入れて暖めてやるのです。その時私は大層感心致しました。

北堀の屋敷に移りましてからは、湖の好い眺望はありませんでしたが、市街の騒々しいのを離れ、門の前には川が流れて、その向う岸の森の間から、御城の天主閣の頂上が少し見えます。屋敷は前と違い、士族屋敷ですから上品で、玄関から部屋部屋の具合がよくできていました。山を背にして、庭があります、この庭が大層気に入りまして、浴衣で庭下駄で散歩して、喜んでいました。山で鳴く山鳩や、日暮れ方にのそりのそりと出てくる蟇がよい御友達でした。テテポッポ、カカポッポと山鳩が鳴くと松江では申します、その山鳩が鳴くと大喜びで私を呼んで『あの声聞きますか、面白いですね』自分でも、テテポッポ、カカポッポと真似して、これでよいかなどと申しました。蓮池がありまして、そこへ蛇がよく出ました。『蛇はこちらに悪意がなければ決して悪い事はしない』