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おんりょうしゃくよう
怨霊借用
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《怨霊借用(おんりょうしゃくよう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,803 字 · 38 頁
それは崖へ上って街道へ出たのであった。
――その時は、お桂の方が、衝と地蔵の前へ身を躱すと、街道を横に、夜泣松の小按摩の寄る処を、
「や、御趣向だなあ。」と欣七郎が、のっけに快活に砕けて出て、
「疑いなしだ、一等賞。」
小按摩は、何も聞かない振をして、蛙が手をくがごとく、指で捜りながら、松の枝に提灯を釣すと、謙斎が饒舌った約束のごとく、そのまま、しょぼんと、根に踞んで、つくばい立の膝の上へ、だらりと両手を下げたのであった。
「おい。一等賞君、おい一杯飲もう。一所に来たまえ。」
その時だ。
「ぴい、ぷう。」
笛を銜えて、唇を空ざまに吹上げた。
「分ったよ、一等賞だよ。」
「ぴい、ぷう。」
「さ、祝杯を上げようよ。」
「ぴい、ぷう。」
空嘯いて、笛を鳴す。
夫人が手招きをした。何が故に、そのうしろに竜女の祠がないのであろう、塚の前に面影に立った。
「ちえッ」舌うちとともに欣七郎は、強情、我慢、且つ執拗な小按摩を見棄てて、招かれた手と肩を合せた、そうして低声をかわしかわし、町の祭の灯の中へ、並んでスッと立去った。
「ぴい、ぷう。……」
「小一さん。」
しばらくして、引返して二人来た時は、さきにも言った、欣七郎が地蔵の前に控えて、夫人自ら小按摩に対したのである。