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かいいくろひめおろし
怪異黒姫おろし
江見 水蔭
線上閱讀江見 水蔭《怪異黒姫おろし(かいいくろひめおろし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,963 字 · 26 頁
もとより人里には遠く、街道端れの事なれば、旅の者の往来は無し。ただ孵化り立の蝉が弱々しく鳴くのと、山鶯の旬脱れに啼くのとが、断れつ続きつ聴えるばかり。
「それならば、どう致したら宜しいのか」と怨めしそうに美少年は云った。
「おぬしの身の皮を残らず剥ぐ。丸裸にして調べるのじゃ」
「それは又何故に」
「ええ、未だ空惚けおるか。おぬしは拙者の腰の印籠を盗みおった。勿論油断して岩を枕に午睡したのがこちらの不覚。併し懐中無一文の武者修業、行先々の道場荒し。いずれ貧乏と見縊って、腰の印籠に眼を付けたのが憎らしい。印籠は僅かに二重、出来合の安塗、朱に黒く釘貫の紋、取ったとて何んとなろう。中の薬とても小田原の外郎、天下どこにもある品を、何んでおぬしは抜き取った」
「いえいえ、全く覚えの無い事」
「ええ、未だ隠すか。これ、この懐中のふくらみ、よもやその方女子にして、乳房の高まりでも有るまいが」
毛むくじゃらの手を懐中に突込み、胸を引裂いてその腸でも引ずり出したかの様、朱塗の剥げた粗末な二重印籠、根付も緒締も安物揃い。
「これ見ろ」
美少年は身を顫わせ、眼には涙をさえ浮べて。
「御免なされませ。