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きょうふじょう

恐怖城 他5編

佐左木 俊郎

線上閱讀佐左木 俊郎《恐怖城 他5編(きょうふじょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,735 字 · 290 頁

青空文庫

10

高津先生は隣村へ行くその汽車の中で、当時のことを追想していた。

10

学校の運動場に生徒がいなくなると、犬がのそのそと入ってくることは珍しいことではない。

近所の農家の子犬が第七学級の教室の窓の下を通ると、窓から黒い洋服がぶらさがっていた。その詰襟の垢のついたカラーは三日月形になって覗いていた。

三日月形というよりも、魚の形に近かった。

色彩が鰊に似ていた。

とにかくも子犬は魚が引っかかっていると思った。子犬はその魚に跳びついて咥えた。一緒に洋服が落ちてきた。意外にも魚は魚の味を持っていなかった。

咥えて二、三度左右に振ってみたが、やはり魚の味は出てこなかった。

咥えて振り回して歩いているうちに、子犬は蟇口を発見した。洋服を咥えて振り回しているうちに、そのポケットから落ちたのだった。

子犬は一片の肉が落ちていると思った。貪るようにして噛んでみた。

これはカラーよりはいくぶんの味があったが、いくら噛んでも肉の味は出てこなかった。

そのうちにふたたび詰襟のカラーが目についた。子犬は味のない肉を捨てて、魚のほうへ行った。そこへ一人の少年がばたばたと走ってきた。