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きょうふおう

恐怖王

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《恐怖王(きょうふおう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 頁

青空文庫

蘭堂は鬼ごっこの鬼の様に、両手を拡げて、抜け目なく身構えした。

「君達は両方から挟みうちにしたまえ、ナアニ、大丈夫だ。あいつは武器を持っていないのだ。ちっとも怖がることはないぞ」

蘭堂の指図に従って、二人の書生が一人ずつ、左右から寝台の向う側へ迫って行った。

ゴリラ男は今や絶体絶命であった。うしろに窓はあるけれど、頑丈な鉄格子だ。寝台の下をくぐって逃げようにも、その向うには蘭堂が立ちはだかっている。しかも、左右の敵は、太いステッキを振りかざして、刻一刻迫って来るのだ。

だが、この野獣は、少しも騒がなかった。兇悪なゴリラの顔に、ゾッとする笑いを浮べて、ギラギラする目で蘭堂を睨みつけた。

「ワハハハ……、俺が武器を持っていないって? 武器って、ピストルか、それとも九寸五分か。オイ、蘭堂、貴様これが見えないのか。ホラ、こんなすばらしい武器が」

ゴリラが破れ鐘の様な声で云った。ギャアギャア叫ぶばかりだと思っていたら、この猛獣は人間の言葉を知っているのだ。

彼はそう云ったかと思うと、目にもとまらぬ早さで、寝台の上にかけ上った。オヤッ、こいつ何をするのだ。

「ホラ、これが俺の武器だよ」