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あくむ

悪夢

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《悪夢(あくむ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,930 字 · 32 頁

青空文庫

五六人の者が立止って、ぶらりと垂れて血の滴る仔犬の足を、ぼんやり見送っていた。私もその一人だった。犬の姿が路次の中に消えると、私は我知らず其処まで走っていった。奥深そうな狭苦しい暗い路次であって、きゃんきゃんいう仔犬の悲鳴が、路次一杯に反響して吐き出されてきた。と思ったのは僅かな間で、やがてしいんと静まり返った。その静けさから、私はぞっと身が竦むような感じを受けた。

やがて私は、両手を懐につっ込んで、一歩一歩踏みしめるような足取りで歩き出した。折り挫かれた仔犬の足の痛みを、自分の身内に感じていた。そしてまた、ああいう人通りの中で、犬の足を轢いたまま無事に逃げてゆけるとすれば、兎に角早く逃げさえすれば、何をしたって大丈夫だ、とそんなことも考えていた。それからまた、何かしら血腥い異常な興奮にも駆られていた。昔子供の頃田舎で、蛙を捉えてきて蛇に呑ませ、円く脹らんだ蛇の喉元を木片で逆にこすり上げて、蛙をまた吐き出させ、半死半生の蛙が漸くに飛んで逃げるのを見て、髪の毛がぞっとするような喜びを味った、あれと同じような、残忍な毒々しい興奮だった。

そして暫くして私は、自分が或る一人の男の後をつけてることに気付いた。