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あくじゅうへん

悪獣篇

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《悪獣篇(あくじゅうへん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,715 字 · 73 頁

青空文庫

ちょうどそのたらたら坂を下りた、この竹藪のはずれに、草鞋、草履、駄菓子の箱など店に並べた、屋根は茅ぶきの、且つ破れ、且つ古びて、幾秋の月や映し、雨や漏りけん。入口の土間なんど、いにしえの沼の干かたまったをそのままらしい。廂は縦に、壁は横に、今も屋台は浮き沈み、危く掘立の、柱々、放れ放れに傾いているのを、渠は何心なく見て過ぎた。連れはその店へ寄ったのである。

「昔……昔、浦島は、小児の捉えし亀を見て、あわれと思い買い取りて、……」と、誦むともなく口にしたのは、別荘のあたりの夕間暮れに、村の小児等の唱うのを聞き覚えが、折から心に移ったのである。

銑太郎は、ふと手にした巻莨に心着いて、唄をやめた。

「早附木を買いに入ったのかな。」

うっかりして立ったのが、小店の方に目を注いで、

「ああ、そうかも知れん。」と夏帽の中で、頷いて独言。

別に心に留めもせず、何の気もなくなると、つい、うかうかと口へ出る。

「一日大きな亀が出て、か。もうしもうし浦島さん――」

帽を傾け、顔を上げたが、藪に並んで立ったのでは、此方の袖に隠れるので、路を対方へ。別荘の袖垣から、斜に坂の方を透かして見ると、連の浴衣は、その、ほの暗い小店に艶なり。