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あくりょう
悪霊
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《悪霊(あくりょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,980 字 · 67 頁
それから着衣の方は、無論単衣物に違いないのだが、「紫色の矢絣」の絹物で、帯は黒っぽいものであったと答えた。矢絣というのも現代には縁遠い柄で、歌舞伎芝居の腰元の衣裳などを思出させる古風な代物だが、老年の片輪乞食は、この我々には寧ろ難解な語彙をちゃんと心得ていて、さも昔懐しげな様子で、歯のない唇を三日月型にニヤニヤさせながら、少女の様にあどけない声で答弁した。彼はその女が眼鏡をかけていた事も記憶していた。
この二人の人物が姉崎家の門を入った時間は、黒服の中年の男の方は午後一時から一時半頃までの間、矢絣の若い女の方は午後二時から二時半頃までの間と判断すれば大過ない様に考えられた。だが、彼等が門を出て行った時間は、つまり彼等が夫々どれ程の間姉崎家に留まっていたかという事は、残念ながら全く知る由がなかった。乞食はそれを見なかったのだ。二人ともいつ門を出て行ったか少しも気附かなかったというのだ。居眠りをしていたか、躄車を動かしてコンクリート管の蔭へ入っていたか、それとも他のものに気を奪われていた隙に、両人とも門を出て行ったものであろう。
来た人が帰って行くのを見逃がしていた程だから、この両人の外に、乞食の目に触れなかった訪問者がなかったとは云えないし、姉崎家への入口は正門ばかりには限らないことを考えると、殺人犯人が