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あいとにんしきとのしゅっぱつ

愛と認識との出発

倉田 百三

線上閱讀倉田 百三《愛と認識との出発(あいとにんしきとのしゅっぱつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 64,420 字 · 129 頁

青空文庫

氏の哲学の特色はすでに述べたから、ここには繰り返さない。ただいいたきことは氏の哲学には生物学的の研究が欠けていることである。たとえば生殖というような大問題には少しも触れてない。愛に関しては多く論ぜられてるけれど、それはただキリスト教的な愛についてであって、性欲の匂いの籠った愛については何の説くところもない。ことに永遠の大問題である死に関して何事をも語らないのには大きな不満を抱かないではいられなかった。『善の研究』の書き替えらるるときには Leib に関する深い、新しい研究の結果が添えらるることを望んでおく。

終わりに臨んで私は力強く繰り返したい。氏の哲学には生命の脈搏が波打ってる。真面目なる、沈痛なる力がこもってる。しかもその力はしっとりと落ち着いて、深い根を張っている。氏が内部生命の衝動に駆られて、真剣に自己の問題につきて思索しつつある痕跡は至るところに残っている。ことに宗教を論じられるあたりは、病中の作であるからでもあろうが、氏の苦悩と憧憬とがありありと見えてことに感情が籠っている。淋しげなる思索の跡はそぞろに涙を誘うものがある。「デカルトの哲学は数学の定理の如きものを組み立てて作ってあるけれども、よく読んで見れば、彼の内心の動揺と苦悩が窺われて、強く、沈痛の力に打たれる」