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らんだのかるた

懶惰の歌留多

太宰 治

線上閱讀太宰 治《懶惰の歌留多(らんだのかるた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,369 字 · 25 頁

青空文庫

冠氏は、薄紅の山茶花の如く寒しげに、肩を小さく窄め、困惑の有様であった。

「おい。」と由良氏は声を掛けた。

冠氏は、きょろとして由良氏を見つけ、にっと笑った。由良氏も、すこし頬を染めた。

「行こう。」

「うむ。」冷雨の中を、ふたり並んで歩いた。

一つの傘に、ふたり、頭を寄せて、歩いていた。そうして、さだめの地点に行きついた。

「用意は?」

「できている。」

すなわち刀を抜いて、向き合って、ふたり同時にぷっと噴き出した。切り結んで、冠氏が負けた。由良氏は、冠氏の息の根を止めたのである。

刀の血を、上野の池で洗って清めた。

「遺恨は遺恨だ。武士の意地。約束は曲げられぬ。」

その日より、人呼んで、不忍の池。味気ない世の中である。

ち、畜生のかなしさ。

むかしの築城の大家は、城の設計にあたって、その城の廃墟になったときの姿を、最も顧慮して図をひいた。廃墟になってから、ぐんと姿がよくなるように設計して置くのである。むかしの花火つくりの名人は、打ちあげられて、玉が空中でぽんと割れる、あの音に最も苦心を払った。花火は聞くもの。陶器は、掌に載せたときの重さが、一ばん大事である。