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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《我が家の楽園(わがやのらくえん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 頁
祖父は、
「お迎い、ご苦労」
と、うなずいてみせたが、みょうなぐあいに、頭をぐらぐら揺すぶりだしたと思うと、あおのけにドンとひっくりかえって、眼をあけたまま大きな鼾をかきだした。
背の高いひとは、収用住宅の検分にきた、綜合病院の書記にすぎなかったので、度胆をぬかれて、けげんな顔をしていた。
大井と田村は、熟した苺のような赤い顔で、調子の高い鼾をかいている祖父の枕元に坐り、
「先生も、あまり、そそっかしい。ジープが来たと、申しあげただけなのに」
「ともかく、きょうのジープが、命とりになったか……いや、悪い運勢であった」
などと、勿体らしい愁傷顔をしていた。
背の高いひとは、家扶や執事の話を聞くなり、この老人の強がりは、ほんの見せかけで、内心は逮捕命令が出るのを恐れ、毎日ビクビクしていたのだと、一流の率直さで見ぬいてしまったので、おかしいやら、気の毒だやら、挨拶にも困っていたが、激発の原因はわれわれの側にあるのだから、この病人はこちらでひきうけるといって、そのまま病院へ連れて行った。
四日目の朝、祖父の顔色が、苺色から桜桃色にまで薄れ、子供のようなやすらかな寝息をたてはじめた。