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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

線上閱讀久生 十蘭《我が家の楽園(わがやのらくえん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 頁

青空文庫

錬獄に住みて

一

錬獄に住みて

一

夜明け近く、百々子は雪の原に立って、どこかの教会の火事をながめていた。

最初は、蒼ざめた緑に近い火光だったので、星影が窓にうつっているのだと思ったが、間もなく、赤味を帯びた橙色から、夕焼けのような輝きのある鮮紅色に変った。六ヵ所ぐらいのところから、いちどに立ちあがった火の柱は、信じかねるほどのはやさで燃えひろがり、たがいに連合協同して、見る見るうちに、おそるべき火勢になった。

なにひとつ眼をさえぎるものもない雪の原のうえで、宏荘な白堊の寺院が、薔薇色から朱金色までのあらゆる色階の変化をしめしながら、音もなく寂然と燃えあがるさまは、ちょうど絵入り聖書の錬獄の図にそっくりで、なにか意味深い天の啓示ででもあるように思われた。

百々子は、ひとの心を現世からひき離し、彼岸の幻想にさそいこむような、一種、分析しがたい美観にうたれて、

「まあ、きれいだこと」

と叫び、その声で、びっくりして眼をさました。

ああ、夢だったのだと思い、眠りからさめきらぬ漠然とした意識でマジマジしていると、どこか近いところで、木の枝がはぜるような乾いた音がした。眠ろうとすると、耳元でパチパチ鳴る。