輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

あるおとこのしゅき

或る男の手記

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《或る男の手記(あるおとこのしゅき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 43,279 字 · 86 頁

青空文庫

来るなら自宅の方へ来そうなものだ、そして私の帰りが待ちきれないというなら、妻へ話しても用は足りる訳だ、などと私は考えながら、また一方には、それを押して会社へ出かけてくるくらいだから、何かよっぽどの事件に違いない、などという好奇な期待の念が、私の心に甘えかけてきた。

一時間ほどたって、彼女は会社へやって来た。その間に私は、大体の仕事を急いで片付けて、いつ会社を退出してもいいようにしておいた。勿論意識してそうしたわけではなく、自然に気が急いてそういう結果になったのだった。一体私は、平素はのらくらしていて随分懶け者だが、一朝事があると――と云えば大袈裟だけれど、例えば子供が病気で入院したりなんかしてる場合には、人手の少い家の中でいろんな用をしながらも、平素の幾倍となく自分の仕事を捗らすのである。「あなたくらい妙な人はない、忙しい時ほど仕事がよくお出来になるんだから。」と妻はよく私に云ったものだが、私としては、泰平無事な時よりも、苦しい脅威が迫ってくればくるほど、心に張りが出来るし働き甲斐があって、ぐんぐん仕事が進むのである――仕事といっても、英語の小説の飜訳くらいなものだが。