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せんじりょこうかばん

戦時旅行鞄

海野 十三

線上閱讀海野 十三《戦時旅行鞄(せんじりょこうかばん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,792 字 · 22 頁

青空文庫

わいわいいっているうちに、とつぜん大きな音響と共に、船体はひどい衝動をうけ、ぐらぐらと大揺れに揺れたかと思うと、今度はぱったり動かなくなった。

さあたいへん。頭が変だと思っていた船員たちは、周章てて跳ね起きると甲板へとびだした。

すると、何というべら棒な話であろう。汽船の前には、美しい花壇があった。又汽船の後には道路があって、自動車がひっくりかえっていた。右舷を見れば、町であった。左舷を見ればこれも町であった。これは変だ。やーい、海はどこへいった。

船員たちは、一同揃いも揃ってダブルで気が変になりそうであったが、中に気の強い者もいて、本船の位置について鮮なる判定を下した。

「おい、何といっても、これは、わが汽船は○○港の陸上へのしあげたのだよ。ここは○○市だ」

「そんなべら棒な話があるかい。○○港なら、まだ二日のちじゃないと入港できないんだ」

「馬鹿をいえ。お前たちの目にも、ここが○○市だってぇことが分るはずだ。ほら向うを見ろ。幾度もいってお馴染みの木馬館の塔があそこに見えるじゃないか」

「ははん、こいつは不思議だ。あれはたしかに木馬館だ。するとやっぱり本当かな、わが汽船が○○市に乗りあげたというのは」