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しょうきょく
「探偵クラブ」傑作選 幻の探偵雑誌8
橋本 五郎
線上閱讀橋本 五郎《「探偵クラブ」傑作選 幻の探偵雑誌8(しょうきょく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,896 字 · 12 頁
寒さがゾクゾクと背を襲った。だがそれから後は不思議に世界がしーんとして、夜は、何のさまたげもなく更けて行くかに思われる。
十一時を過ぎたばかりであった。田中君は電燈の明るくなったのに力を得て、火鉢にうんと炭をついだ。だが部屋を出て行って見る勇気はまだ出て来なかった。
「明日にしよう、今夜は寝るのだ」
そうきめたけれど、寝ることもその決心ほどには出来ないのであった。
門脇の塀が一ヶ所、風のためらしく破れていた。向いの屋敷の板塀は殆ど、扇の骨を抜いたようになって倒れている。
屋敷町の入口のことで、地面は洗われて反てきれいになっていたが、塀に添った溝にはまだ濁り水が川のように流れていた。
朝日が照っているのである。
田中君は、門から始めて、ぐるりと屋敷の周囲を調べて見た。あの雨だから、血はきれいに流れ去ったに違いない。だが死体をどうしたろう? 運んで行ったか? それにしても何か遺留品がないものか――
「何かお捜しになってるんですか」
と向いの屋敷の年輩の主人が、何時か出て来て、呆れたように我が家の塀のさまを見ていたのが、不審に思ったのかそう声をかけた。
「いや何でもないんですが……」