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つめ

探偵クラブ 烙印

大下 宇陀児

線上閱讀大下 宇陀児《探偵クラブ 烙印(つめ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,509 字 · 103 頁

青空文庫

いわば僕の一生涯は、その悪事のために捧げられるといってもいい。芸術家が一世一代の大作品を作り出すように、科学者が生命を賭して、宇宙の一大神秘を解こうとするように、僕は、前人未踏の境地に分け入って、悪の最高峰を極めようというのだ。大きな悪事をする前に、小っぽけな悪事で、警察へ連れて行かれるなんてのは甚だ不名誉だ。だから僕は、目下出来るだけ謹慎して、時期の到来を待っているのさ」

当時の私は、佐治がいかにもうまいことをいうので感心したものだ。ただ、今にして思えば、佐治が、本音でこんなことをいったのか、それとも面白半分であったのか、その点が多少曖昧にもなって来る。

偽悪病が、最後まで偽悪病であればよろしい。けれども、いずれの日にか、彼の偽悪が偽悪でなくなる時が来ないとは断言出来ない。その意味で私は、佐治を危険人物と見做すことに躊躇しないのだ。大学を出てから彼は×省へ入って役人になり、今度洋行して来たという。昔よりはずっと大人になったし、学生時代のように、無闇と偽悪ぶりを発揮することもあるまいけれど、それこそ反って、肚の底では、本当に何かの悪事を企らみ、その準備にとりかかっているのだと考えることも不可能ではない。