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たんていしょうせつのなぞ
探偵小説の「謎」
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《探偵小説の「謎」(たんていしょうせつのなぞ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 頁
したがって、在来探偵作家にして、生涯に一度も密室事件を取り扱わなかったものは、一人もないといってもいいし、また、生涯密室事件ばかりと取り組んでいる作家さえ現われたのである。
探偵小説史で、この密室の「不可能」を最も早く主題とした作品はポーの「モルグ街の殺人」であるが、このポーの作品や、ずっと後に出たルルウの「黄色の部屋」にテーマとして示唆を与えた実際の事件があった。私は今から四十余年前、一九一三年十二月号の「ストランド・マガジン」に、ジョージ・シムズがそれを書いているのを読み、いまもノートに貼りつけてある。要約すると、シムズがいまから百年ばかり前と書いているのだから、十九世紀の初め頃と思われるが、パリのモンマルトルのあるアパートの最上階、地上六十呎もある一室に住んでいた Rose Delacourt という娘さんが、昼になっても起きてこないので、警官がドアを打ち破って室に入ると、娘さんはベッドに寝たまま胸を刺されて死んでいた。兇器は刺さったままで、非常な力でやったものとみえ、そのきっ先が背中まで突き通っていた。窓は内部からしまりができていたし、入口の唯一のドアは内部から鍵がかけられ、鍵は鍵穴にさしたままで、その上閂までかかっていた。