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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《播州平野(ばんしゅうへいや)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 頁

青空文庫

縫子が、となりの座敷で、ひっそりと縫物をしていた。うしろに、叔母の古風な大箪笥が置かれて、側面に、ひなびたかけ鏡がかかっている。ひろ子は立って行って、涙のおさまった自分の顔をつくづくとその上に眺めた。そして、縫子に声をかけた。

「ねえ、縫ちゃん」

「なんでありますか」

「どうも、この調子だと、わたしは一番綺麗でいたいとき、一番みっともなくなってしまいそうだわ」

「あら」

「だってそうじゃないの。もし、かりに重吉さんが帰るときまったら――かりに、そうときまったらよ」

ひろ子は、その仮定をしつこく繰返した。

「わたしは歩いたって東京へゆくわ。そうでなくたって、もうこの四五日で大分あやしくなってしまったんだもの――へこたれねえ」縫子は、年かさの娘のものわかりのよさで優しく力づけた。

「心配はいりませんよ。汽車もそろそろ通じているし――大丈夫でありますよ」

十月六日、例によって正午近く新聞がくばられた。縫子と叔母とは、ドーナッツを御馳走すると云って、台所の七輪のところにいた。

ひろ子は新聞をもって来て机の前へ坐った。見出しを先ずたどって行って、紙面の中ごろへかかったとき、ひろ子の顔つきが突然変った。