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けいごろん

敬語論

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《敬語論(けいごろん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,289 字 · 11 頁

青空文庫

フランスにも女性語はある。学校で先生が出欠をとる。ハイと答えるに、男学生はプレザンと答え、女学生はプレザントと答える。語尾に余計物がつくこと、日本のワヨの如しである。

よしんば言葉に変化はなくとも、女性的な抑揚は男性とは別であり、女性の抑揚も亦個性によってそれぞれの相違があり、かかる表現上の相違と、言葉自体の相違と、本質に於ては異るものではない筈だ。本質は何か。即ち、嗜好や教養である。

★

敬語の問題も亦、女性語と同じことだ。オ茶碗だ、オ箸だ、食器にまでオの字をつけて怪しからん。ナゼ怪しからん。ナゼ怪しからんてッたッて食器にオの字をつけて敬う必要があるか。ナルホド必要はない、然し、言葉は必要の問題であるか、然らば、茶碗や箸などという言葉に、必ずそうでなければならぬ必要や必然性があるのであるか。これは、どうも、ないらしい。ナゼ箸とよばねばならぬか。二字もあるなんてゼイタクな。ハ、ではいかんか、シ、ではいかんか。

つまり、敬語など突ッつき、言葉の合理性などということを言いだすと、言葉全体を新たにメートル法式につくりあげない限り、合理化の極まる果はないのである。