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ぶんがくじょうのふっこてきていしょうにたいして

文学上の復古的提唱に対して

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《文学上の復古的提唱に対して(ぶんがくじょうのふっこてきていしょうにたいして)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,051 字 · 12 頁

青空文庫

そういう意味でつかわれ、作家の勘ということは、科学的・理論的批評を否定し得る力のように、或る場合では今日に於ても、相当絶対的な云い方でつかわれている。勘という言葉は、いきやさびより遙かに用途も広汎で、現代の日常性に富んでいるのである。

ごく日本的な、この勘というものは、どんな歴史のいきさつの中から今日に伝わっているのだろう。由来、剣道、能楽などの秘伝は、最後は直感、綜合的なこの勘で、悟入し得る手がかりを様々の抽象的な云いまわしや象徴的な比喩で書きあらわしたものと思える。ところで、剣道の流派というものも、能楽も昔は一子相伝的で、特に刀鍛冶など、急所である湯加減を見ようと手など入れればその手を斬り落される程のものであったと云われている。歴史が今日の私達に教えているところに従えば、最も封建的な形でのギルドが、一つの職業における親方と弟子との関係の中に生んだものが、勘の土台をなしているのである。それは当然当時の製作工程の未熟、原始性をも語っている。

文学創作の過程は複雑で、個性的であるけれども、主観的に所謂たたき込んだ勘にたよるばかりで、作家が常に必ずしも現実の核心にふれて描き得るかどうかということには大きい疑問があると思う。