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ぶんがくいぜん

文学以前

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《文学以前(ぶんがくいぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,171 字 · 38 頁

青空文庫

更にこの発足を世界的規模にまで高めなければならない。

これがどういうことを具体的に意味するかは、茲には云うまい。さし当って「永遠の人」のキリスト像によって得た新旧のイメージを凝視して、それを吾々自身のものともしたいのである。

N

何かの機縁で――それがどういうものだったか今は忘れたほどのごく些細な機縁で――私は亀を飼うようになった。庭の隅に低い囲いをし、小池をあしらった、二坪ほどの地面で、固より大きな海亀などを飼えようわけはなく、ごく普通の亀で、今では、いし亀とくさ亀とが十匹ばかりいるきりである。そのいし亀とくさ亀にしても、初めは、甲羅が美しく均勢のとれたものを吟味して集めたのだが、長く飼養しているうちに、徐々にではあるが勝手な成長をし、また汚れはてて、ごく平凡なものとなってしまった。――その代りよく人に馴れて、手を差出せば指先をしゃぶって、食餌を請求するほどになった。人間にばかりでなく、猫にも馴れてきた。家に二匹の猫がいて、漆黒の親猫の方は、もう亀などを見向きもしないが、純白の仔猫の方は、しばしば亀の囲いの中にはいりこんで、珍らしそうに亀たちをからかっていたが、遂には互に馴れてきて、魚の生肉などを與える時には、同じ皿のものを仔猫と亀と仲よく食べてる始末である。