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ぶんがくいぜん

文学以前

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《文学以前(ぶんがくいぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,171 字 · 38 頁

青空文庫

無心で亀を眺めるのは楽しい。あの重い甲羅を背負って、水中を泳いだり地上を匐ったりしてる時、その緩慢な動作のうちには、少しも齷齪焦躁の気はなく、ひどく悠然たるものがある。だが、日光の直射にじっと甲羅を干しながら、頸を長く伸ばして四辺を眺め、やがてその頸をひっこめて静まり返る時、その熱せられた甲羅の内側には、如何なる夢想がはぐくまれることであろうか。亀を眺める人の方でも、いつしかうつらうつらとして、怪しい夢想に陥ってゆくのである。――斯かる夢想の本体はなかなか捉え難い。それはもはや超俗の哲理である。

通俗には、亀について三様の見解があるようである。三様の寓話がそれを象徴する。

第一の寓話――

イソップ物語の中のもので、兎と亀の競争として世界的に有名である。日本でも特殊の完成した形態を取り、一般に知られている。

亀は兎から歩みのおそいのをあざけられまして、それでは競走をしてみようと申込みました。兎は笑って取合いませんが、亀が強いて云いますので、競走をすることになりました。兎は走り出しましたが、途中で、遊んだり居眠りしたりしました。亀はゆっくりとたゆまず歩き続けました。