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ぶんがくいぜん

文学以前

豊島 与志雄

線上閱讀豊島 与志雄《文学以前(ぶんがくいぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,171 字 · 38 頁

青空文庫

私見――この話のなかの亀は、無謀な野心家で、遂には亀らしくもない短気のために身を亡ぼしてしまったが、それはどうでもよく、あの重い身体で空中旅行を夢みるところだけが真実である。その夢想は、小池のふちの石の上で甲羅を干してる折などに、熱くはぐくまれるもので、たとえ身が亡びてもそれだけは残存するであろう。

私見は、普通の説とは少し距りがあるかも知れない。それも、私が亀を愛するからであろうか。

亀を静かに見ていると、私自身も亀の仲間入りをした気持になってくる。亀には少しも人を反撥させるものがないのだ。そして私は、今庭にいる以外のもの、少くも東洋近傍にいるものをみな飼いたくなる。まる亀ややま亀やしな亀は固より、海に住む大きなもの、あか海亀やあお海亀をも飼いたく、美しいたいまいをも飼いたい。亀を愛する気持からして、私が今かけてる眼鏡のふちは、たいまいの甲羅からとれる鼈甲にしている。

すっぽんだけは少し危い。鋭い歯を具えていて、喰いついたなら雷が鳴らなければ離さないと云われている。だが、このすっぽんの親方について、日本にはいろいろの面白い民話がある。その中で一つ、柳田国男氏が書かれているのを、茲に大略借用すれば――