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いけぶくろのかい

文藝別冊[総特集]岡本綺堂

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《文藝別冊[総特集]岡本綺堂(いけぶくろのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 72,671 字 · 149 頁

青空文庫

若旦那の枕もとへいくたびに、わたしはいつでもぶるぶる顫えていた。

お冬 (怨みの声をふるわせる。)和吉さん。おまえはなんという人だろう。あんまりだ、あんまりだ。(泣く。)

和吉 さあ、腹の立つのは重々もっともだが、もう少し辛抱して聴いておくれ。恋がたきの若旦那がいなくなれば、おそかれ早かれお前はわたしの物になる。いや、きっとわたしの物にしてみせる……。それを思うと、嬉しいが半分、苦しいが半分で、きょうまでこうして生きて来たが……。(嘆息して。)ああ、もういけない。あの岡っ引はさすがに商売で、とうとうわたしに眼をつけたらしい。

お冬 岡っ引が、もうここの店へ来たんですかえ。

和吉 大和屋の旦那と一緒に来て、酔っぱらっている振りをして、主殺しがここの店にいると大きい声で呶鳴り散らした上に、あてつけらしく磔刑の講釈までして聞かせるので、わたしはもうそこに居たたまれなくなった位だ。(おびえたように左右をみかえる。)そこで、わたしはもう覚悟を決めてしまった。ここの店から縄附きになって出て、牢へ入れられて、引き廻しになって、それから磔刑になる。そんな怖ろしい目に逢わないうちに、わたしは一と思いに死んでしまう積りだ。