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いけぶくろのかい

文藝別冊[総特集]岡本綺堂

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《文藝別冊[総特集]岡本綺堂(いけぶくろのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 72,671 字 · 149 頁

青空文庫

お冬 え。

和吉 そういうわけだから、おまえから見れば若旦那を殺した仇に相違ないが、わたしの心持もすこしは察して、どうぞ可哀そうだと思っておくれ。若旦那を殺したのはわたしが重々悪い。この通り、手をついて幾重にもあやまる……。その代り手前勝手の云い分かは知らないが……。(涙ぐんで。)わたしが死んだあとでは、せめてお線香の一本も供えておくれ。それが一生のお願いだ。

(お冬も泣きながら聴いていると、和吉はふところから財布を出す。)

和吉 ここにお給金の溜めたのが、三両二分ある。これはみんなお前にあずけて行くから……。

お冬 いいえ、そんなものを貰っては困ります。

和吉 まあ、そう云わずに受取ってくれ。

お冬 でも、そんなものは……。

和吉 決して係り合いになるようなことはしないから、まあ、受取っておくれと云うのに……。

お冬 そんなことが人に知れると……。

和吉 知れないように黙っていればいいじゃあないか。

(たがいに財布を押し遣り押し戻している時、八つ手のかげより半七が顔を出して咳払いする。和吉はおどろいて見かえれば、半七は再び隠れる。和吉はおちつかぬていにて、無理に財布をお冬に突きつけ、あわてて上のかたへ走り去る。