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ばけものやしき
文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
柳川 春葉
線上閱讀柳川 春葉《文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会(ばけものやしき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,305 字 · 10 頁
怪物屋敷
私が北豊島郡染井の家に移ったのが、明治三十五年の春であった。何しろ滅法安値い家で、立派な門構に、庭も広し、座敷も七間あって、それで家賃が僅かに月三円五十銭というのだから、当時まだ独身者の自分には、願ったり適ったりだと喜んで、早速その家に転居をすることに定めたのであった。一寸その家の模様を談してみると、先ず通路から、五六階の石段を上ると、昔の冠木門風な表門で、それから右の方の玄関まで行く間が、花崗石の敷石伝い、その間の、つまり表から見ると、門の右側の方に武者窓のような窓のついている長屋が三軒あって、それも凡てこの家に附いているのだ、この長屋というのは、何れもこれも、最早長年人の住まわなかったものか、床も壁も、ぼろぼろに頽れて、戸をあけて内へ入ると、一種嫌な臭気がプーンと鼻をつく、それ故以前に居た人なども、物置にでもつかったものらしい形跡がある、こんな風に、三軒が皆行き通しのようになっていて、その中央の家の、立腐れになってる畳の上に、木の朽ちた、如何にも怪し気な長持が二つ置いてある、蓋は開けたなりなので、気味悪る悪る内を覘いて見ると、別に何も入っていないが、その辺には真黒な煤が、堆く積っていて、それに、木の片や、藁屑等が、乱雑に散かっているので実に目も当てられぬ