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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子(どうじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 頁

青空文庫

ことに、高塀や樹の上へ攀じ上ることが、殆ど目にとまらないくらい迅かった、たとえば、彼の右の手のかかった土塀では、その手が塀庇につかまると同時に、もう、塀を越えてしまっていたからである。――そういう噂がつたわるほど、大手さき御門から西町や、長町の六番丁までの椎の繁った下屋敷では、鎌鼬が夕刻ばかりではなく、明るい白昼の道路にも、ふいに、通行人の脛か腰のあたりを掠めた、と、話すひとびとは必らずそのあたりの通りに、うす汚ない重右の姿を見ないものはなかった。では、この赤星は内弟子でも取っていたかというと、そういうものは一切とらなかった。どうして食っているかさえ分らなかった。台所町の彼の住居は、六畳の仲間部屋しかなかった。昼も晩も寝通しでいる事があるかと思うと夜中にふいに出て行くことがあった。

地震の珍らしいこの城下では、よく赤星が樹の上にのぼり、樹をゆすぶっていたというものさえ居た。そして地震の来るのを恐がりながら、緑葉の間から叫んでいた、と。

ともあれ、城内では、赤星重右を西方の、大乗寺山の奥峰にあたる、黒壁という山頂の小さい社を中心にして九万歩の地所をあたえるという名義で、この赤星を封じることに決議された。