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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子(どうじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 頁

青空文庫

三

」

母親は、それをいつもの慣いであるだけに止めることができなかった。

「そう。もうおかえり?」

父親の顔をふと見た。笏は、煙草をふかしながら煙の中から母親のかおを見返した。

「ではお静かにしていらっしゃい。」

「ええ。」

童子は立った。間もなく表へしずかな素足の音がした。――あとを見送っていた父親はすぐ座を立った。「何処へいらっしゃる。」母親は、真青になった笏の顔をまともに見上げた。

「あれのあとから行って見る……。」

笏の、そういう声音はふだんとはかすれていた。その上眼色まで変化っていた。女は、笏のどこかを掴もうとした。

「あれのあとから行っても何んにもなりません。」

「いや、あれのあとから行って見る……。」

笏は、そういうと玄関のそとへ飛び出した。白い道路は遠いほど先の幅が狭り、ちぢんで震えて見える。ふた側の垣根の暗が悒然と覆うているかげを、童子はすたすた歩いていた。電燈は曇ってひかり沈んでいた、と、黒いかげがだんだんに遠のいてゆくのである。

三

笏梧朗は、小さい影を趁うてゆくうち、じめじめした水田のようなところへ出ていた。限りもない水田のうえに円い緑色の葉が浮き、そのあいまに白い花が刺繍された薄明りのさす四辺は、さざ波一つ漂わない、底澄んだ静かさだった。