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みすじまちかいわい
斎藤茂吉随筆集
斎藤 茂吉
線上閱讀斎藤 茂吉《斎藤茂吉随筆集(みすじまちかいわい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,559 字 · 37 頁
一月の時には私は鳥越神社にも参拝した。神殿も宝庫も震災後新に建てられたもので、そのころ縁日のあったあたりとは何となく様子がかわっていた。それから北三筋町の方へも歩いて行って見た。今は小さい通りも多くなって、電車通に向いて救世軍の病院が立派に建っている。新堀は見えなくなってその上を電車の通ったのは前々からであるが、震災後街衢が段々立派になり、電車線路を隔てた栄久町の側には近代茶房ミナトなどという看板も見えているし、浄土宗浄念寺も立派に建立せられているし、また東京市精華尋常小学校は鉄筋宏壮な建築物として空に聳えつつあった。かつて少年私の眼にとまった少女の通っていた学校である。
私の追憶的随筆は、かくの如くに平凡な私事に終始してあとは何もいうことがない。ただ一事加えたいのは、父が此処に開業している間に、診察の謝礼に賀茂真淵書入の『古今集』を貰った。多分田安家に奉ったものであっただろうとおもうが、佳品の朱で極めて丁寧に書いてあった。出処も好し、黒川真頼翁の鑑定を経たもので、私が作歌を学ぶようになって以来、私は真淵崇拝であるところから、それを天からの授かり物のように大切にして長崎に行った時にもやはり一しょに持って歩いていたほどであったが、大正十三年暮の火災のとき灰燼になってしまった。