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あたらしきシベリアをよこぎる

新しきシベリアを横切る

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《新しきシベリアを横切る(あたらしきシベリアをよこぎる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 12,232 字 · 25 頁

青空文庫

上の寝台から下りて来ながら、

――いやに寒いな!

いかにも寒そうな声で云った。

――まだ早いからよ、寝もたりないしね。

いくらか亢奮もしているのだ。車室には電燈がつけてある。外をのぞいたら、日の出まえの暗さだ、星が見えた。遠くで街の灯がかがやいている。

永い間徐行し、シグナルの赤や緑の色が見える構内で一度とまり、そろそろ列車はウラジヴォストクのプラットフォームへ入った。空の荷物運搬車が凍ったコンクリートの上にある。二人か三人の駅員が、眠げにカンテラをふって歩いて来た。

――誰も出てない?

――出てない。

荷物を出す番になって赤帽がまるで少ない。みんな順ぐりだ。人気ないプラットフォームの上に立って車掌がおろした荷物の番をしている。足の先に覚えがなくなった。

――寒いですね。

猟銃を肩にかけて皮帽子をかぶった男が、やっぱり荷物の山の前に立って、足ぶみしながら云った。

――ここは風がきついから寒いんです。

やっと赤帽をつかまえ、少しずつ運んで貨物置場みたいなところへ行った。

――どこへ行くんですか?

――日本の汽船へのるんだけれども、波止場は? あなた運んでは呉れないのか?