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しんじゅのことば

新樹の言葉

太宰 治

線上閱讀太宰 治《新樹の言葉(しんじゅのことば)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,156 字 · 59 頁

青空文庫

たのしいわが家。いつも、あたたかく、博士をいたわり、すべてが、うまくいって居ります。玄関へはいるなり、

――ただいま! と大きい声で言って、たいへんなお元気です。家の中は、しんとして居ります。それでも、博士は、委細かまわず、花束持って、どんどん部屋へ上っていって、奥の六畳の書斎へはいり、

――ただいま。雨にやられて、困ったよ。どうです。薔薇の花です。すべてが、おのぞみどおり行くそうです。

机の上に飾られて在る写真に向って、話かけているのです。先刻、きれいにわかれたばかりのマダムの写真でございます。いいえ、でも、いまより十年わかいときの写真でございます。美しく微笑んでいました。」まず、ざっと、こんなものだ、と言わぬばかりに、ナルシッサスは、再び、人さし指で気障な頬杖やらかして、満座をきょろと眺め渡した。

「うん。だいたい、」長兄は、もったいぶって、「そんなところで、よろしかろう。けれども、――」長兄は、長兄としての威厳を保っていなければならぬ。長兄は、弟妹たちに較べて、あまり空想力は、豊富でなかった。物語は、いたって下手くそである。才能が、貧弱なのである。