輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
線上閱讀林 芙美子《新版 放浪記(しんぱん ほうろうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 頁
そして何度もしくじっては自分の顔を叩いた。ああ幽霊にでもなりそうだ。青いガスの燈火の下でじっと両手をそろえてみていると爪の一ツ一ツが黄色に染って、私の十本の指は蚕のように透きとおって見える。三時になるとお茶が出て、八ツ橋が山盛店へ運ばれて来る。店員は皆で九人いた。その中で小僧が六人、配達に出て行くので、誰が誰やらまだ私にはわからない。女中は下働きのお国さんと上女中のお糸さんの二人きりである。お糸さんは昔の御殿女中みたいに、眠ったような顔をしていた。関西の女は物ごしが柔かで、何を考えているのだかさっぱり判らない。
「遠くからお出やして、こんなとこしんきだっしゃろ?」
お糸さんは引きつめた桃割れをかしげて、キュキュと糸をしごきながら、見た事もないようなきれいな布を縫っていた。若主人の一郎さんには、十九になるお嫁さんがある事もお糸さんが教えてくれた。そのお嫁さんは市岡の別宅の方にお産をしに行っているとかで、家はなにか気が抜けたように静かだった。――夜の八時にはもう大戸を閉めてしまって、九人の番頭や小僧達が皆どこへ引っこむのか一人一人いなくなってしまう。のりのよくきいた固い蒲団に、伸び伸びといたわるように両足をのばして天井を見上げていると、自分がしみじみあわれにみすぼらしくなって来る。