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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《新版 放浪記(しんぱん ほうろうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 頁

青空文庫

毛布が馬鹿に人間臭い。暗い戸外を、「別嬪さん」と男がどこかの女を呼んでいる声がしている。今日は主人夫婦は子供を連れて成田さんにお参り。おかみさんのおふくろさんが留守番に来ている。コックの大さんと云う爺さんが、私達にいりめしをつくってくれている。

勝ちゃんが階下からウイスキーを盗んで来た。私製ジョニオーカア。暗がりで二人でウイスキーをビンの口から飲みあう。一丈位も躯がのびたような気がする。文明人のする事ではないでしょうけれど、まあ、この女達を哀れにおぼしめして下さい。私は酔うと鼻血の出るような勇ましい気になる。

*

(六月×日)

肥満った月が消えた

悪魔にさらわれて行った

帽子も脱がずにみんな空を見た。

指をなめる者

パイプを咥えるもの

声を挙げる子供たち

暗い空に風が唸る。

咽喉笛に孤独の咳が鳴る

鍛冶屋が火を燃やす

月は何処かへ消えて行った。

匙のような霰が降る

啀みあいが始まる。

賭け金で月を探しに行く

何処かの煖炉に月が放り込まれた

人々はそう云って騒ぐ。

そうして、何時の間にか

人間どもは月も忘れて生きている。

スチルネルの自我経。ヴォルテエルの哲学。ラブレエの恋文。