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めいじびじんでん

新編 近代美人伝 (上)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (上)(めいじびじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 頁

青空文庫

彼女はどこまでも優しい新妻であり、普通の女らしい細君であったが、信州の山里から出て来たのは、こんな片田舎の料理店の細君として納まってしまう約束であったのであろうかと思わぬわけにはゆかなかった。それに彼女の故郷の風習と、木更津あたりの料理店の女将である姑の仕来りとは、ものみながしっくりとゆかなかったその上に、若主人は放蕩で、須磨子は悪い病気になったのを、肺病だろうということにして離縁された。

……私は思う。勝気な彼女の反撥心は、この忘れかねる、人間のさいなみにあって、弥更に、世を経るには負じ魂を確固と持たなければならないと思いしめたであろうと――

嫁入ってたった一月、弱まりきった彼女はまた飯倉の姉の家にかえってきた。健康が恢復して来ると、五年の星霜は、彼女には何かしなければならないという欲求が起って来た。

正子が松井須磨子となる第一歩は、徐々に展開されるようになった。彼女に結婚を申込んだ人に前沢誠助という青年があった。高等師範に学んでいたが、東京俳優学校の日本歴史教師を担任していた。俳優学校というのは、新派俳優の故参、藤沢浅次郎が設立したもので、そのころ米国哲学博士の荒川重秀氏も新劇団を起し、前沢はその方にも関係を持っていた。