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めいじびじんでん

新編 近代美人伝 (上)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (上)(めいじびじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 頁

青空文庫

「半井さんの事は先生がよく御承知であって、訪問をお止めにならないのを、何ぞ噂するのでございましょうか」

と歌子にたずねた。すると歌子の返事は、実に意外に彼女の耳に鳴り響いた。

「では、行末の約束を契ったのではないのか」と。

彼女は仰天して、七年の年月を傍においた弟子の愚直な心を知らないのかと、怨み泣いた。

「でも、半井氏という人は、お前は妻だと言触らしているというではないか。もし縁があってゆるしたのならば、他人がなんと言おうとも聞入れないがよい。もしそうでないのならば、交際しない方がよいだろう」

と歌子は諭した。それ故にこそ彼女は梅雨の日を訪ずれたのである。そして、絶交する人の目に、島田に結んだ姿を残そうとしたのである。

愛するあまりに、妻とも言ったであろうかの恋人に、その故に絶交しなければならない彼女は、たった一月前には思う人の病を慰めるためにと、乏しい中から下谷の伊予紋(料理店)へよって、口取りをあつらえたり、本郷の藤村へ立寄って蒸菓子を買いととのえたりして訪れていた。ある時は、朝早くから訪れて午過ぎまで目ざめぬ人を、雪の降る日の玄関わきの小座敷につくねんと、火桶もなく待あかしていたこともあった。