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いちのくらさわなんりょう
新編 風雪のビヴァーク
松濤 明
線上閱讀松濤 明《新編 風雪のビヴァーク(いちのくらさわなんりょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,081 字 · 51 頁
時計をなくしたので時間ははっきり分らないが、大分寝過したようなので急いで椹島を出た。ところが眼が猛烈に痛い。太陽の光線でピリピリと泌み、涙がポロポロとこぼれて眼をあけつづけることができない。昨日強烈な紫外線の中を、眼鏡をかけずに歩いていたので雪盲にかかったのだ。その眼鏡は今朝になって見ると皮肉にもウインドヤッケの中で、首にぶら下っていたのである。しかし、もはや後の祭りである。半泣きの難行が始まった。曲り角で前途を見極めておいて、眼をつぶってピッケルで足下をさぐりながらの盲目行である。眼が痛いだけでなく、今までの疲労と、欠食が一時にたたったのか、足腰も痛んでよいよいの道行であった。当り前なら、この素晴らしい天候に喜び勇んで歩いているはずなのに馬鹿馬鹿しい限りである。道は左岸伝いにうねうねとつづいていた。坦々たる道ではあり、こうして次第に人里に近づいているにもかかわらず、一歩一歩が苦痛でむしろ道端にひっくり返って寝てしまいたかった。ところどころ大きなガレがあって、そんなところは特にその感を深くした。東木賊の廃屋の手前の沢で軽い昼食をとる。これが最後のパン、もう日数が経ってぼそぼそになっているのを水で流し込んだ。