輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しんさいゆうき
新西遊記
久生 十蘭
線上閱讀久生 十蘭《新西遊記(しんさいゆうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 26,654 字 · 52 頁
風当りのすくないところを探し、ツクツクをかぶって岩陰に身を寄せたが、寒気と泣き叫ぶような風の音でまんじりともできない。坐禅を組んで、眠るがごとく眠らざるがごとくにうつらうつらしていると、夜半近く、大雪になって雷さえ鳴りだした。雷鳴と吹雪のなかで、世界が生れ出る音を聞いたと思った。
夜が白むのを待って、反対のほうへ鞍部をさがしに出かけた。鉛のように重い足をひきずりながら一時間ばかりのぼると、凍った薄い空気にやられ、山に馴れたテンバまでが咳きこみだした。見るとテンバの唇が無くなっている。顔も唇もおなじような土気色になり、唇が朝顔の蕾のように口のなかへすぼみこんでいる。いうにいえぬ異様な顔つきだったが、それをなんだと思う気力もない。空気に飢え、いまにも窒息せんばかり。一歩ごとに四つから十ぐらい呼吸し、ものの五歩も歩けば、いちど停って休まないと心臓が破裂しそうになる。ものを考える力も判断する力もなくなって、夢現のまま機械のようにのぼっていると、テンバがなにかいいながら上のほうを指す。目の上の氷河の床から千五百尺ほどあがったところに、吹雪に傷められた荒れ肌の岩が二つならび、その間にザラメ雪に蔽われた切通しらしいものが見える。