輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

りょしゅう

旅愁

横光 利一

線上閱讀横光 利一《旅愁(りょしゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 576,941 字 · 1138 頁

青空文庫

の前まで進んだ。暫く彼はドアを叩いてみたが千鶴子の起きて来る様子はなかった。久慈は灯のまったく消えた廊下に立ったまま意想外な大冒険をしている自分に気がつき、それではまだ宵に飲んだ酒気から醒めてはいないのだろうかと怪しむのだった。しかし、ドアをまた叩きつづけているうちに千鶴子の起きて来たらしい声がした。久慈は鍵穴へ口をつけ、「僕、久慈だ。久慈。」と呼んでみた。鍵の廻る音がしてから問もなく千鶴子は眠そうな顔でドアを開けた。

「遅くから失礼、一寸、急用が出来たのでね。」

と云って久慈は、千鶴子の顔を見ず中に這入り椅子に腰かけた。海老色のガウンを着た千鶴子は寝台の裾の方に坐って、

「もう夜が明けるころよ。よく寝入っていたのに失礼ね。」

と両頬を撫でながら不平そうな笑顔だった。

「今夜きりでもう起さないから一寸つき合ってもらいたいんだ。どうも弱ったんだよ。」

久慈は椅子の背へ頭を倚らせるいつもの癖を出し、幾らか馬鹿らしそうな微笑で何から話せば良かろうかと考えた。

「どうしたの。お酒まだ醒めないんじゃない。そんならいやよ。」

「いや、酒は醒めてるから大丈夫だ。矢代にも僕の来たこと黙ってるから、君もそれだけは云っちゃいけないよ。