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うえの

日和下駄 一名 東京散策記

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《日和下駄 一名 東京散策記(うえの)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 33,955 字 · 70 頁

青空文庫

持っている人が持っていない人にやるのは当前でしょう。」

「当前なものか。そんな事は露西亜へでも行ったら知らないこと、日本じゃ通らない。兎に角ここで議論をしても仕様がない。一体、お前、いくらほしいのだ。黙っていては困る。ためしに言って見た方がいい。」

「半分いただきたいつもりです。」

「半分。百円の半分か。」

「いいえ。」

「じゃ、千円の半分か。」

「いいえ。」

「じゃ、一体何の半分だ。」ときくと、お民は事もなげに、「あなたの財産の半分。」と云切って、横を向いてまた煙草の烟を天井の方へ吹きかけた。

僕は覚えず吹き出しそうになったのを、辛くも押えて、「兎に角そんな出来ない相談をしたって、暇つぶしはお互に徳の行くはなしじゃないから。どうだ。両方で折合って、百円で一切いざこざ無しという事にしようじゃないか。」

僕は紙入から折好く持合せていた百円札を出してお民に渡した。別に証文を取るにも及ぶまい。此の事件もこれで落着したものと思っていると、四五日過ぎてお民はまた金をねだりに来た。其の言う語と其の態度とは以前よりも一層不穏になっていたので、僕は自身に応接するよりも人を頼んだ方がよいと思って、知合の弁護士を招いて万事を委託した。