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にほんのでんせつ
日本の伝説
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《日本の伝説(にほんのでんせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 頁
その大西家で板にした縁起には、こういう話が書いてありました。ある年十一月の二十三日の晩に、白髪の婆さまが一人訪ねて来て、一夜の宿を借りたいといった。うちは貧乏で何も上げるものがないというと、食事には用がない。ただ泊めて下さればよいといって、夜どおし囲炉裏の火の側に坐っていた。夜の明け方に清水を汲んで貰って、それを湯に沸かして静かに飲み、そうして出て行こうとして大西家の主人に向い、私はこの家の先祖と縁のある者だ。今またこうして親切に、宿をしてもらったのはありがたいと思うから、そのお礼にはこれからいつまでも、大西の子孫と名乗る者は疱瘡が軽く、長命をするように守ってやろうといって帰った。その跡を見送ると、ちょうど今のお社のあるところまで来て、愛染明王の姿を現じて行方知れずになったといってあります。種痘ということの始まるまでは、疱瘡はまことに子供たちの大敵でありました。それだから殊に疱瘡神をおそれ敬うていたのでありますが、この老女は実はそれであったらしいのです。愛染明王はもとは愛欲の神であったそうですが、愛という名からわが国では、特に小児の無事息災を祈っていました。