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ぎじんのすがた

日本の怪談

田中 貢太郎

線上閱讀田中 貢太郎《日本の怪談(ぎじんのすがた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 56,030 字 · 115 頁

青空文庫

「未だほんとうじゃないね」

「どうかいたしましたか」

「俺が声をかけると、ちょっと眼を開けて見といて、すぐ彼方向きになって返事もしないのだよ」

「それでもおとなしくなりましたよ、初めのうちは、どうしようかと思いましたよ、ねえ、坊ちゃん」

「そうだよ、狂人のようにあばれてたなあ」

間もなく夕飯が出来ると新三郎は新一と膳を並べて飯を喫った。其処へお滝の処へ膳を持って往った老婆が帰って来た。

「今晩は、何時になく、私がお膳を持って往くと、黙って喫べましたよ」

その晩新三郎と新一は奥の間へ寝て、老婆は茶の間へ寝たが、その晩もお滝は何事もなかった。

朝飯の後で新三郎は表座敷へ往った。その時はちょうどお滝が便所へ往っていて姿が見えなかったので、其処に立って待っていると間もなく帰って来た。

「おい、まだ体が悪いのか」

お滝は眼を見すえたようにして見ていたが、そのまま返事もせずに寝床の上へ横になってしまった。

「やっぱり悪いのか、それとも俺が判らないのか」

「ものを云うのが煩いよ」

「そうか、体が悪いならしかたがない、ゆっくり寝てるが好い、土産を買って来てあるが、なおってからにしよう」