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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
こうして来てみて私は安心したけれど」
すると、母親も次の間の襖の蔭から声をかけて、
「この子がそういうていました。おかあはん、私は口が下手で、よういわんさかい、あんたから、おいでやしたら、ようお礼いうてえやちゅうて。……此家のことも、もっと早うにお返事すりゃ好うおしたのどすけど、この子が二月に一と月ほど、ちょっと心配するほど患いましたもんどすさかい、よう返事も出しまへなんだのどす」
私はそちらへ頭を振り向けながら、
「いや、もう、こうして来て見て、思っていたほどでなかったので安心しました」と、そちらへ声をかけた。
ちょうど気候の加減が好いので、いつまで起きていても夜の遅くなっているのが分らないくらいである。
やがてまた母親が、
「もう二時をとうに過ぎたえ。……あんたはんもお疲れやしたろ。お休みやす」
といったので、ようやく気がついて寝支度をした。
六
そこがあまりおり心が好かったので、何年の間という長い独棲生活に飽いていた私は、そうして母子の者の、出来ぬ中からの行きとどいた待遇ぶりに、ついに覚えぬ、温かい家庭的情味に浸りながら一カ月余をうかうかと過してしまった。