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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
「今になってそんなことを言っている」と、言葉を和らげていうと、女もすぐ静かな調子になって、
「あんたはんが、ただ自分ひとりでそうお思いやしたのどすやろ」
「私が自分ひとりでそう思った?……あんたの体を解決することを」
「ええ、そうどす」
「私が自分ひとりでそう思ったって、あんたの方でも依頼したから送る物を送っていたのじゃないか。いくら私がお前を好いていたって、そっちでも頼まないものを、どこに、自分の身を詰めてまで仕送る道理がない」
「そやけど、あんたはん、初めの時分は、私にそうおいいやしたやおへんか。自分はお前を可哀そうや思うて恵んでやるさかい。後になって私のところにお前が来る気があったら来てもええ、その気がなかったら来てもらわいでもええ。……私そのつもりでいました」彼女は静かな調子ですこし人を戯弄うようにいう。
なるほどそう言えば、ぼんやりしているようでも、女がよく記憶しているとおりに、彼女に、ずっと初めに金品などをくれてやった時分には、そんなことを言ったように思う。それは、女にどんな深い関係の人間があるかわからないための、こちらの遠慮であると同時に、また自分の方へ彼女を靡き寄せようとする手もまじっていたのであった。