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うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁

青空文庫

た。

それはもう五十を少し過ぎた女であったが、何でも聞くところによると、もと此家の女あるじと同じく今から二、三十年前にやっぱり祇園町で商売に出ていたことのある女で、松井の主人が運の好いのに反して、この方は運が悪かった。そして以前朋輩であった人間の内へ女中頭のような相談相手のようにして住み込んでいるのであった。松井の女あるじの今なお一見、二、三十年前この土地で全盛を謡われたことを偲ばしめるに反して、お繁婆さんの方は標致もわるく、見るから花車婆さんのような顔をしていた。それでも話してみると、わけは割合によくわかる方で、お繁さんは笑顔で、

「おこしやす。えらいお久しぶりどす」と、いって、打ち融けて挨拶をして、

「えらい端の方でお気の毒さんどすが、今ちょっと奥が取り込んでいますよって、ここで失礼いたします」と、いって、婢衆に座蒲団を持って来さして、私にすすめる。

「ええ、もう、どうぞ構わないで下さい」と、私は小さくなって、そこの玄関の二畳の間に差し向って坐った。

そこで、さっき電話で聞いた女のことを改めて問い糺すと、お繁さんは、率直な調子で、

「お園さんはもう半月ばかり前にひどい病気になりまして、それで引きました」