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うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁

青空文庫

新吉が帰っていってからお前は私の傍に戻って来てそういった。

「何だ。あの物のいい振りは。俺はあんな人間がお前の姉の亭主だと思うと厭だからいわなくとも早くどこか探して出てゆくよ」

「初めガラッと門をあけて入って来た時に、あんまり恐ろしい権幕だったから、私はどうしようかと思った。私を打ちでもするかと思った。私、あれが新さんが厭なの。そりゃ姉の亭主だから義兄さんにいさんと下手に出ていれば親切なことは親切な人なんですけれど」

「なんだ。教育がどうのこうのッて」

「自分一人偉い者のようにいって」お前もそういって冷笑った。

そんな喧しいことがあったけれど、私がどうしてもずるずるに居据って出てゆかなかったのでとうとうお前の方から姿を隠してしまったのだった。

そしていつの間にかもうそんなところへ嫁いていたのだと聴いたから、私は、新吉はじめお前たちを身を八裂きにして煮て喰ってもなお飽き足らぬくらい腹が立ってあんなに、お前をどこの街頭でも構わない、見つけ次第打ち殺すと書いたのだ。

加藤の二階で、寂しさやる瀬なさに寝つかれぬままその手紙を書きながら、どうあってもお前を殺すという覚悟をしていると、いくらか今朝からの怨恨が鎮静して来たようだった。